ハンディのある人との『筆談コミュニケーション』

自閉症、ダウン症、重度心身障害の人たちの豊かな内面と出会えます

Sさんと母と七野の筆談と心のケアセッションの軌跡 その3

 Sさんは、家族生活を充実させながら、自分を振り返っている。そこで、(GHグループホーム)での生活を考えている話しになり、本人の不安や動揺が語られる。やりとりの中で親の真意に触れ、落ち着いて考えられるようになる。誰の心にもある「自立と自律」への、はじめの向かい合いの場面といえる。

 

202X.梅雨(最近の希望は?)

早く毎日、園に行くこと 散歩のお出かけは いつものようにしたいです。

お父さんも調子はまあまあだから 健康が戻ってきてると思うので、安心しています。

あんまりお父さんとお母さんに迷惑をかけたくない。

いろんな良い家族があるなら ぼくの家族は 一番温かい家族です。

しちのさんもそう思うでしょ。

(えぇ、そう思うよ)

(七野と以前雨の絵を描いていて)いつか忘れた、でもぼくの心には 時々こんな感じで雨が降るときがある。

そこで僕は 水で遊びたいのだけど 叱られるからやめとこうって思う。

いつもぼくなりに(不安やストレスを解消する)よいこと見つけているけど、それはとめられることが多いです。

間違ってもいいからやってみたいことはあります。手作りの箱作りとか棚(作業のこと)とか。家でもいつも同じ事だけより 失敗しても良いから、いろんな 手伝いをさせて下さい。

ストレッチ体操はチョット辛いです。

(続いていますか?) 

はい、ぼちぼちですね。

ぼくは歩くのは苦じゃないです。 まあ父さん母さんより若いですから、お花の咲いている道は ゆっくり花を見ながら歩くところが、落ち着いて良い気持ちでいられます。

でも運動はもっと元気よく歩くのが良いと思うので、どっちも出来るようにするのは大変です。だから今は 綺麗なお花を、ゆっくり歩いて見て歩きたいです。

(書道クラブで書いた) あの時のお習字は 僕の気持ちを書いたので 皆に見て欲しい(数年前の習字の作品は、ホワイエ教室に飾ってある)。

『いきてるっていいな いきてるっていいな いきてるってたのしいな』

 

202X.6.18 (父の日に)

お父さんに手紙を書いて嬉しかった 又書きたい。

「お父さん いつもドライブに連れていってくれて有り難う

>ぼくは色々するけど とめて欲しい 早く色々しなくなりたい。お父さん元気でいてね」

 

202x年初夏 (Sさんセッションから帰ってお母さんと)

今晩は!Sです。いつもありがとうございます。

(前回のセッションから帰ってから、七野先生とお話してどうだった?と聞くと)

すっきりした(と言っていました。)

家でも、いつも同じようなことだけより、失敗してもいいから、いろんな手伝いをさせてください。繰り返していると、ちょっとずつじょうずになると思うので、体験させてください。

 

202X.夏(書道クラブの事、コロナで中止中)

また書きたいと 思っています。みんな一緒にいろいろしてたのに、集まってできなくて 寂しいです。書けることは、力を出して伝える事です。

Sの気持ちを皆さんに発表してくれるのは とてもうれしいです。自分では何も出来ないけど、語ることは、Sがお父さんお母さんから生まれた意味を 伝える事になります。

Sはいろいろ世話になることばっかりです。そしてやっぱり自信がなくなるので、自分で決めたやり方をし続けてしまうのも、怒られる原因です。

お母さんはSが自分で考えて出来るように ずっと手伝ってくれています。もう長い年数手伝ってもらってるけど、上手くいかないことがまだまだあります。

お母さんはいろいろSのしている事をよく見ていると思う。そうでしょ。

Sは母さんがいてくれるから、とても大きな愛情に抱っこされているようです。

 

202X.秋(ホワイエ教室に貼ってある、アマビエの貼り絵を見て)

皆さんの病気が、早く良くなりますように、アマビエを作ったのは、母ですか?(Sさんと同じようにセッションに来ている参加者が製作しました)

(この日台風が来ていて、教室に来られるか心配だったとのこと)

まだ台風は近くにいますか?

(名古屋くらいかなあ)

 

(そろそろクーラーを付けずに過ごしたいけれど、Sさんが付ける事について)

暑がりのSと言われています

暑いときに付けて、気持ちがよかったので、ずっとしていたいです。

いつまでもクーラーをつけて風邪をひいたことないでしょ。たくさんの風がくる方がいいです。

おかあさんはいつもそんなことに気をつかっています。

 

(七野が、朝9時頃から教室に出勤していることについて)

いろいろすることがあるのですね。あまりたくさん仕事をすると疲れるから、気をつけてくださいね。

みんな、コロナのことが気になって、イライラしたり怒りやすくなっていると思います。

どこへも行けないことも、イヤなことのひとつです。

(日帰りバス旅行が中止になって)

イヤでもしんぼうです。

いつもはゆっくりしています。ひまともいいます。そうはいっても ついていくだけ(配達の仕事?) なので、申し訳ないけど仕事したいです。

みんなもしたいこと出来ないから、残念というより、しあわせが逃げていくと思っているのです。

 

グループホームにいずれはいるという話になると、この件は初めてのここで聞いた!)

家はひとつがいいです。

グループホームで、母がB(の事業所)のGH(グループホーム)設立委員会に入っていることについて 母と筆談))

知らなかった。(今の)園を、おさらばするのですか?

見つけたグループホームは、遠いのですか?

グループホームにいったら、家には帰ってこれなくなるのでしょうか?

(土日に帰ることも出来ます。)

Sの家はひとつと思っていたけど、グループホームは家ですよね。

Sの家は、グループホームですか、家ですか?

(矢継ぎ早の質問は、本人の何か言いたい事の表れかも、ここで、)

早く決めたいというのは、ぼくが(お母さんがぼくのことを)イヤだと思ってる?

ぼくがいると、しんどいと思ってる。ぼくがいるとしんどいと思って、寝たいと思う。

Sがイヤで寝てほしいと思っているのでしょ。

(GHを探している意図を取り違えている様子を見て、母と七野はその誤解を解く) 

(いやがられてるからGHではなく、自立・自律と将来の為と、話しをする)

(筆談七野)

みつけたことは、せんせいがこだわりの人(七野は、親が子を思う気持ちについて力説した)

お母さんは、いつもSの身体のこと、気にしていることは知っていました。

ついつい怒られると、Sがわるいんやって、思ってかなしくなってしまうのです。

わかったからゆるしてください。

(わかったことって、具体的には何?とシチノは続ける)

ぼくが、きらわれてないこと。(ホッ、一件落着というのでしょうか!!)

 

202X.秋(母と)

いろいろしたらとめてほしいから いつでも言えるように考えたジェスチャー

(頬を指さす・・・ごめんなさい 脇腹を指さす・・・とめてほしい)

(担当者会議の話し)

皆さんが来て、( Sの事を) 心配されていることが、ぼくには気になっています。

グループホーム(GH)の話になり、身体の動きが大きくなるも、指談を続ける)

いつもいつも お母さんの気持ちがうれしくて お礼をしっかり言いたいんです。

(それでは、言ってください)

いつも心配してくれて ありがとう。いろいろ心配かけて ごめんなさい。

いろいろしたら とめてほしい。

しちのさんは、ぼくのことを いろいろわかってくれて うれしい。

Sは小さい時から 「お母さん」とは言えなかった。

学校いったり 園に行ったりしてきた。

今度はとうさんが(出張)行ってたみたいに、行くんだよって言われて(グループホームのこと) 、いいかなとも思った。

それでも園には行かないで、Bという所に行く事になるんだな,

(Bは、通所作業をする事業所とGHも持っている)

そしてきょう(このGHの話を)聞いたのは、はじめてだった。

待ってほしいことは、Sがいろいろいままでお世話になった(園の)人たちに、しっかりお礼を言ってから、園をさよならしたいことです。

B(事業所)は、これからSのことを見てくれるところと思いました。

でもちゃんと(園に)お礼を言いたい。

しちのさんは これからもここでお仕事しますか?

(はい!)

また会いたいです。 

 (続く!)