ハンディのある人との『筆談コミュニケーション』

自閉症、ダウン症、重度心身障害の人たちの豊かな内面と出会えます

能登半島への想いを綴って

 

Sさん(40歳代後半)、新しい事業所でのお仕事や生活リズムに馴染み、職員さんも御本人の様子に合わせながら、活動に参加が続けられるよう、工夫してくださっているこの頃です。

 月1回のセッションでは、最近の出来事やその時に感じた事・考えた事が筆談・指談で話されます。

 今回は、あけましておめでとうございます!から始まり、能登半島地震の話しになりました。

 親御さんは、社会の様子に関心を持っている息子さんを、改めて大人だねぇと感心されていました。

さらに、自分には何が出来るのかとか、もし自分だったらと思案されます。

そのやりとりと一部です。

筆談は、S:で、母:は同行している母親、七:は援助者の七野です。平仮名を漢字に変更しているところはあります。

 

S:あけましておめでとうございます。今年は、びっくりな1月1日でした。

七「能登半島の事?」

S:そうです。地震です。

母「特に気にしていない様子でいて、知ってたのね」

S:ぼくは神戸にいて何もしてあげられないけど、七野さんはどうしたらいいと思いますか?

S:もし、反対に神戸が地震になったら、ぼくはどうしたらいいのかも知りたい。

七:「元自衛官のお笑いやす子ちゃんが、『日常を送れる方はいつも通り、今皆がいる場所で精一杯日常を生きるのが大切かも、まずは自分の生活を丁寧にすること、そして義援金!』と話したよ。そして、私が考えるには、働いていない子どもは祈る事、暖かい場所で眠れますように、ご飯が食べれますようにって」

(そんな話をしました。)

 

S:ぼくは働いているので、(事業所への)利用料を引いて、のこったお金は全て、義援金にします。

(本人の想いに応えるべく、母親は、確実に寄附になる所へ義援金を送る事を約束しました。)

 

S:ぼくは恵まれているんだよね。おうちが壊れて住む所がなくなったり、お金もなくて困っている人がいる。ぼくは、働く所もあるし、寝る所もあるんだよ。

 

七:「石川県産の魚や商品を買って、協力する方法もありますよ。」

 

S:ぼくは食べる事は出来るから、(石川県産の)さかなとか買うのはいいことだと思う。

 

母:「石川県さんの魚探すわね!」

 

S:(新しく行っている)事業所は、とてもいい所です。だからずっと行きたい。

いいところは、僕をちゃんと大人として関わってくれるんです。

このたび、石川(県)の地震の後も、いろいろ僕に話してくれて、一緒に頑張ろうなっと言ってくれるので、安心です。

(以前、津久井やまゆり園の事件の後、怖くて門を閉めたくなった。それで前事業所のゲートをすぐに何度も閉めようとして、こだわりと思われた、エピソードがある)

 

S:お正月はお祝いする日ですけど、この日に地震という大変な思いをした人達がいると思うので、(七野)先生が言うように、

『いのります(力強く大きく書く)』

(地震にあった人達に向けて)元気にすごしてください。助け合ってください。

 

その後、母と指談。

S:ぼくは、石川県に行けないので、代わりに行って助けてあげてください。(これは、七野にむけてだろうか!?)

 

以上。

 

追記:

さらに、30歳代の筆談ユーザーさんとのセッションでも、地震の話になった。(筆談援助者勉強会in大阪でユーザーとして、筆談練習のボランティアをしてくれている)勉強会に参加をしている方が金沢に住んでおられる事で、想いを寄せ、その方へ心配と励ましの手紙を書くことになった。

 

天災や世界の紛争等、社会の事へ関心を持って、市井の人々への心配と温かい眼差しが感じられたやりとりを体験させてもらった。そのセッションに居られたことを私が感謝している。