ハンディのある人との『筆談コミュニケーション』

自閉症、ダウン症、重度心身障害の人たちの豊かな内面と出会えます

筆談・指談を日常に

今回のエピソードは、筆談・指談(以後 指談)が、こんな使い方をすると家族にとって本当に役立ちツールになるという、エピソードです。

登場人物は、高校生のK君と、歳の離れた義理の兄です。文章は、療育者のシチノです。

 

 兄は、2年程前から、K君と筆談の練習を始めました。療育の日に同行して、生活の中で必要に応じて、K君とやりとりをチャレンジしてきました。

家族のイベントはいろいろあって、母の日や父の日のプレゼント作りは学校や放課後デイサービスでも取り組んでもらっています。感謝の想いを形にして渡す事は、経験しているのです。

それならば、母(ママと呼んでいます)のお誕生日という特別な日にも、きっと想いを伝えたいだろうと、兄は考えました。

 去年は、誕生日プレゼントなにかしたい?!あったら、言ってね!と、筆談で聴いてみることにしました。しかしK君は、何も答えずその場を離れたのです。

兄は、まだK君とコミュニケーション取れてないのかなぁと感じ、一緒に散歩したり食事したりの日々を大切に過ごしていました。

 

 今年も、ママの誕生日が近づいてきました。

再チャレンジ!

一年を経て、兄とK君の関係は、確実に深まっています。時にママには言いにくい事も男同士として、指談するようになっていました。

(兄の台詞は「」、K君のは指談は『』)

 

「今年のママの誕生日、プレゼントする?言ってね。ママには内緒だよ」と。すぐには返答なしです。

しばらくしてからの療育の日、K君が車から降りません。(療育は、K君・ママ・兄はが参加)

ママが先に降りて待っている時。車の中で、K君が兄に指を出して、指談の合図をしました。

『ママのお誕生日考えたよ』

「なに?」

『お花。買いに行きたい』

兄は一計を案じ、ママに「K君と買い物に行きたいから、デイサービスのお迎え行って買い物にいきます」と言って、2人で花屋さんに行きました。

「どんな花がいい?」

『黄色い花!』

お店の方に聞くと、黄色いカーネーションと黄色いアルストロメリアがあります。

(花ことばを後で調べると、黄色のカーネーションは、美と母を慕う素直な気持ち、黄色のアルストロメリアは、長い時を一緒に過ごしてきた愛しい人に送る!ピッタリ!!)

花束とケーキを持って家に帰り、サプライズでお祝いをしました。

 その時の事を、後で話してくれました。

『とても嬉しいことがあった。(ママの誕生日に花束を贈った)』

『ことばでは言い表せないから、お花にしゃべってもらった』

横でママも素適な笑顔で聞いていました。

指談というコミニュケーション

ツールを手にいれた家族のしあわせエピソードでした。

 

追記

ママは最近、今までと違い『黄色』の色に意識や視線がいくことが多くなっていたといいます。K君には、直接話したことはないけれど、生活の中で気づいてくれていたのかなぁと感じて、

ママが「以心伝心やなぁー」って言うたら、K君は、ニヤリとしていました。