ハンディのある人との『筆談コミュニケーション』

自閉症、ダウン症、重度心身障害の人たちの豊かな内面と出会えます

Sさんと母と七野の筆談と心のケアセッションの軌跡 その4

作業実習が始まり、加えて母の入院で父との「一週間ドキドキ生活」、目まぐるしく変わる日々の中で、自分の気持ちと向き合っていくSさんの姿があります。

家族で経験してきた「生きることの楽しさ」をことばにし、さらに仕事をする充実感を、手にし始めているSさんの日々が見えてきます。

 

202X.秋(園は続けて通所しながら、Bに作業実習に、月に数回行くようになった)

今は充実している感じです。みなさん(B事業所)が、Sのことを出来る人やねと 思ってくれるのがうれしいです。Sは誰がスタッフでも、同じように仕事をします。

(園の仕事)ちょっとだよ、でもしごとがあるのはいいことです。

Sがしたいのは、全く何もしないことではなく、ちょっとでもお仕事して役に立ちたい。

 

(母が入院することになり、お父さんと二人で過ごすことになった)

イヤだけど、ショートステイよりましだ。怒られないのなら、一週間でも大丈夫。

それよりお母さんは寂しくないの。一週間病院でお泊まりなのでしょう。痛くなっても泣けないよ。大変なことだと思うから、がんばってほしい。応援するよ。お母さんはいつも強いね。

だって、お父さんにも話しをして、ぼくのことわかって貰うように、いつもしてくれてるから。

(実際のお父さんは、セッションにいつも車で送迎してくれているし、宿泊練習も含めてさまざまなSさんの素敵なサポーターであり、協力者なのです。)

きっとお父さんも本当はSのこと かわいいと思っているのに、ついついおこっちゃうんだよなと思う。

(前回のような、嫌われているという被害者意識から、客観視している大人のSさんの姿が、見える)

 

202X.冬(年末に母が入院して、お父さんと過ごして)

たのしかった。お母さんがいないので、とうさんもSも緊張してた。だから、いつもみたいにイラついたり、つっかかったりしないようにしてたと思う。

ごはんとか大変だったけど、上手くいくように、かあさんがしてくれたと思ってる。

やっぱり男二人は、なんかしょうがない感じがする。かあさんがいてくれるのが、一番いいなって思ったよ。 

ただし この前はかあさんがいなくなったら、グループホームと言われて、病気じゃなくていなくなるって事は、、、。(複雑な気持ちで考えている様子)

Sも一緒に行くことは出来ますか?(どこへ?)

 

ある命を生きることは、こんなにも楽しいって思えるように、生き抜くことが、ぼくには父さんと母さんがいつでも必要なんです。

いてくれないと困るよって思っちゃう、この気持ちは、どこにも置いとけない気持ちなんだよ。

名前をもらった時から、Sとして生きていくことを決めた。

だから いっぱいいっぱいとうさんとかあさんに生きる楽しさを教えてもらってきたんだから、これからだって一緒にいたい。

 

こわいことはないけど、いつも一緒にいてくれる世話人(支援員)さんと仲よくなれるか心配。

お母さんが寂しくないか心配。とうさんが心配。

お父さんは何をするにも、ちゃんと出来ないとイヤな人だから、Sが(GHグループホームに)いっている間、しっかり出来ているかと心配するやろうから、心配。

 

心の中はさみしいのに、(お父さんは)頑張って平気な様子でいるのは、Sはよくわかっている。

でも男はやっぱりかっこつけなと思ってるだろうな。

そうだからあんまり言わんといてあげてな。

 

そしてSも男やから、困った時についつい知らん顔してしまう。

(GHにはいったら)世話人さんは、Sさんは大丈夫って思ってるけど、小心者ですって言っててね。

「これから」って、言われるとやっぱり心配な気持ちがあふれてくる。「おいおい」っていう言葉をよく聞くから そのことですか?

(B事業所のGHを見学して)Kさんはいい人です(Bの理事長)。

 

Sは仕事をしたいと思ってたから、(B事業所は)仕事があってうれしいです。そして「ちょっと寒いけど行こうか」と(職員さんがSに)言ってくれるけど、寒いのは大丈夫です。

まあいい感じなので、少し落ち着きました。

 

楽しみは仕事した後、やったと思えることが楽しみです。(このうれしさが、Sさんにとって仕事の後のお土産!になっている)

 

おとなしいから(リラックスして過ごしてる)って、うれしいだけじゃなく、やっぱり楽しみは、仕事をして役にたったよ、ありがとうと言って貰えることだし、ちょっとずつ上手くなってるって、かあさんに言ってもらえてうれしいです。

ありがとう。またお話ししてください。

 

202x.春

まずはじめに言いたいことは、C(宿泊の練習用の家族の別宅マンション)に行って、眠れたのが、うれしかった事です。

そしてお母さんが言うように、家では相変わらず、寝ることがSの一番の困り事です。

おかあさんの顔が、はれているのが心配です(母の顔がヘルペスの為 顔面麻痺になったこと)。

一番大変だったのは、お休みの時でした。Sはマスクしたくないでしょ(普段は、母のマスクもはずそうとしてしまう)。でもかあさんの顔を見ると心配なので、イヤだけどマスクしていてほしい位でした。

困っていること一杯あるって言われたけど、寝ることだけがぼくの困り事です。

気になることがあると、目が覚めてしまう。

 

「お母さんのことが気になるから、眠れない」と言った時、お母さんをわるく言うつもりなんて、全くないのに (お母さんがその事を)気にしてるだなんて(申し訳ない気持ち)。

パジャマをかえたら眠りやすい(実際は何度も着替える)。

(昼間)途中に眠くなる事はありません。お母さんは何でSの寝ることに、気が気でないのですか?

 

ショートステイは行かないのでしょ。

まだ心の傷が残っている。だから、ショートステイって聞くと緊張する。(以前ショートステイで寝られなくて、たたかれた経験がある)

 

C(家とは違う場所で、眠る練習のため借りている場所)はだいぶ慣れてきたし、上手くいったらうれしい。

ショートステイはなんでするの?

まだ、グループホームは行かないよって、これからコロナがなくなったら、いろいろなことをするから、そのすることの中にグループホームがある。

その練習でショートステイに行くんだったら、コロナがなくなったら、ショートステイに行きます。

 

ママと(おかあさんが)言われた時(代)から、いくつになっても 子どものこと心配なんだね。まずは薬が効くようにお願いしたいです。お母さんは寝てますか?ぼくは起きていても、家から出たりしないから大丈夫。

 

202X.梅雨(母と七野が、Sの薬の話しでしゃべっていると、S立ち上がる)

おかまいなしに、おしゃべりするから、待っていられなくなる。

お母さんは身体の調子が、いまいちになっているので、Sはこのところ心配です。

マヒ(顔面の麻痺)って言ってるけど、それは病気でしょ。しんどそう。お母さんはいつも機嫌良く元気でいてほしいから。

(園の話し)お仕事は少しさせてもらってる。

まだ(睡眠導入の新しい)薬は始まって少ししかたってないよ。

でもお医者さんはSが眠れなくて困っていることを、わかってくれたのでとてもうれしかった。

寝られないのは誰のせいでもないんだと思うと、少しだけ気が楽にはなってはいる。

 

Sはゆっくり休めたら、しっかり見えたり聞こえたりするから、もっと活躍して仕事を任せてほしいと思う。

ただし、今日(セッションの日)は早く起きてしまった。

(仕事は?)

ふつう。やっとお仕事らしい事をさせてもらって、大人になっていいんだって、思えるようになった。Kさんはいい人です(計画相談の担当者)。

時々来てくれると(モニタリング)ぼくのいるところの仕事がよく出来るようになっていると思います。監督みたい。

Sはいつもお母さんに助けられるなあ。ありがとう。

 

これから園の仕事もするけど、B事業所の仕事もしてみたい。Kさんによろしく言ってください。