ハンディのある人との『筆談コミュニケーション』

自閉症、ダウン症、重度心身障害の人たちの豊かな内面と出会えます

2022年末 第42回筆談援助者勉強会in大阪 当日のやりとり②/4

【午前中】

七野:本日は、参加者全員が複数回参加してくださっているので、最近の様子をお聞きして、それぞれが感じたことや考えたことを出し合い深めていきましょう。

また、先日(12月初旬・國學院大學の柴田保之先生と筆談に関心のあるファミリーの会)姫路で行なわれた、筆談親子の会に参加された方がいらっしゃる(NaYさん家族、KiRさん家族)ので、どのようだったかを教えていただけると有り難いです。

続いて、最近興味深い本を見つけたので、紹介します。「手の倫理 伊藤亜紗」という、触れると触るの違いから、普段私達が使っている触れて感じることとは何かを改めて考える機会になる本です。では、次の方。

NaY:まってました。ボクが、知っていることを言います。かしこい(柴田)先生が、おられたので、びっくりしていました(姫路の会に参加)。仕事で、そんなことをしているなんて、今度会えたら、ボクがそれが(かしこくお話やこれからのことをしっかり話していきたい)です。

(柴田先生は)ちょっと、たくさんのことをやりながらここまできたんだと思います。

きょうはよろしくお願します。

 

MiT:5年生。MiTのことは、みんなと心いっしょにあります。

ここの場所が大好きで、ふにゃふにゃしてしまいます(嬉しいと身体がフニャフニャになる)。こんなに、しあわせはめったにないよ。

 

KiR:お母さんはいろいろ経験しているから、Rが安心です。KiMa(Rの妹)もよくわかっているから、良い先生(大学生で保健室の先生希望)になると思います。考えていることをかなえたら(妹は、さらに吉本の芸人プロデューサーになりたい!)、もっとおもしろいのにと思います。

(柴田先生は)やさしい先生でした(姫路の会に参加)。お母さんも妹も、やっぱり強いところがあって、Rも実はやばいです(やばいって、強いってこと?)。

 

NaY:MiTくんへ (僕は)たのしくやりたいと、仕事をしています。

人の役に立つ、やれる仕事、書くことを仕事として、自分にやれる仕事(筆談を広げる)がみつかります。仕事の話がしたいです。そうですね、まず、ここにいる3人で話したいです。

 

MiT:(本当は)まじめに、やりたいのに、(見える言動としてふにゃふにゃして)できない。(間) (30代の先輩のことばを聴いて、改めて自分に言い聞かせるように)ほんとにそう、やるべきことやる。

 

NaY:Moさん(文章でMiTくんの質問に答えてくれた)、しっかり言いたいこと やりたいことをしていますね。きょうは、話しあいがしたいです。

 

KiR:使えるもの(伝える事?)が、いっぱいでこまります。

 

MiT:お母さんはやさしいです。もっときびしくしてください。

お母さんがボクの言いたいことを言ってくれるのです。でも、お母さんが言っていると思われるのがいやです。

 

NaY:(僕も)いつも、お母さんの考えだと思われてきました。

 

七野: (2組みの)ユーザーさんが午後から来ることもあり、本格的な話し合いは午後にしましょう。

 

【午後①】午前中3組み、更に午後からサポーターとして2組みの参加を得て、筆談体験が始まる。

自己紹介の後、参加者は、5人のユーザーさんと書けるように実地の体験で、順番にユーザーさんの座る席に移動する。参加者の名前と参加者が今言いたいこと一言(ドキドキしてます、犬を飼っています等自由に)を、ユーザーさんと一緒に筆談で書き、お互いに交流と筆談体験をする。その時に、それぞれのユーザーさんが、その参加者に返事として言いたい一言も筆談でやりとりした。

 

KiN:Kaさん おしごとがんばってください(前回から、Kaさんが、仕事で利用者さんといろいろやりとりしていて、試行錯誤中だと話していたことを、覚えている)

 

TaM:「おばあにあう」(親しみを込めて、3ヵ月ぶりに会ったKaさん参加者に対して、ちょっと失礼と思いながら。彼は普段アニメや映画の台詞でコミュニケーションを取ろうとする)

   

KiN:とおくからきてくれてるからね。(Kaさんへのさりげないフォロー)

 

KiR: おかあさん(Kaさん)のことはだいすき。おかあさんだけど、しごとしているんですね…つかれてる!?(更にKaさんへのさりげないフォロー。ご自身のお母さんも働いているので、状況がわかっている様子)

 

MiT:きょうはしっかりしたいです(うれしいとふにゃふにゃして困ることがあるので) おうえんてくださいね (かくこと)ぼくもたのしいよ (「ユーザーさんとして、いい仕事してるね」と声がかかる)やりたいことをしているなら おうえんしますよ。

 

KiN:(MiTに)さいきんあってないですね(コロナ等の影響で、1年近く参加していなかった) またきてくれたんですね。

(勉強会が10年以上になり、ユーザーさん家族も同窓会の雰囲気で語り合うことがある

2022年末 第42回筆談援助者勉強会in大阪 当日のやりとり①/4

 勉強会の続きをお楽しみにと、お伝えして、半年が経ちました。お待たせしました!

勉強会の情報と続き3部構成でお伝えします。

【勉強会情報】

筆談援助の会では、2006年から全国で始まった2日間「筆談」集中研修会から、「もっと身近にもっと広がって」を目的に、2011年2月から年4回を目標に一日間の勉強会を大阪でスタートしました。当初から、午前中は参加者の座学とロールプレイ、午後には筆談ユーザーさんに協力してもらって、筆談体験と身体の言葉を聞く(ゆっくり体操やゆらしまたは天心)経験をしてきました。会を重ねていく内に、ユーザーさんの本日の勉強会の感想や気づきに加えて、ご自身の普段のコミュニケーション状況や相談事が話されるようになりました。

今回、小学高学年(支援級在籍)のユーザーさんから、先輩ユーザーさんに向けて、事前に「質問状!」がきました。

そこで主宰者七野は、仕事でゆうゆう・ことばの教室の療育で筆談している小学生から30代の方々に、意見や気づいたことを聞いて、まとめました。そして、支えや後押しになるような一言も書いてもらいました。

勉強会当日には、ご本人にそのまとめたものをお渡しし、更に参加者・ユーザーさん・付添の親御さんと、話し合い深めました。

 

再度質問状を載せます。

MiT(前回はTU)君(小5)からの手紙

『七野先生 こんにちは

ぼくは人生について かんがえています。この先どんなふうに生きたいのか。ぼくの体とたましいは こんなにもバラバラで のんびり生きると たましいがたいくつするし、たましいがたのしいことは 体がいうことを聞きません。この先はテクノロジーが ぼくの体をたすけてくれるかな。

ぼくらみたいな 知的におとっていると思われている人にかんするけんきゅうは 科学的に証明しにくいから あとまわしだよね。 

  このまま たましいにつらい想いをさせるのは 体がかなしむよ。

こんなふうに思って居生きてるのは MiT(TU)だけじゃないよね。

 たくさんいけんをききたい。そうすれば たましいがなっとくできるかな。

 大人になってるみなさん おしえてください。体とたましいをバランスとれなくてつらいとき どうしていますか。 MiT(TU)。 おわり。』

2022年12月 第42回筆談援助者勉強会in大阪

司会・講師:七野友子  オブザーバー:Y(敬称略)

参加者:Ka(支援員)・NaYm(支援員・親)・KiRm (親)・MiTm(親)(全員複数回参加)

午前中からのユーザー:NaY・KiR・MiT

午後からのユーザー:TaM(付き添い母TaMm)・KiN(付き添い母KiNm)

筆談援助の文章は、斜線になっています。筆談や指談が平仮名の場合も読みやすさから、漢字にしている場合があります。「」は、音声で話した内容です。( )内は、補足です。

3部にして、載せます。

ほぼ逐語録(手書き文章をパソコンが得意なKiNさんが入力)なので、話題が飛んだり途切れたりもします。ご理解いただき、お読みくださいませ。

4年ぶり! 筆談援助者勉強会 in 福岡 

お知らせです!

『筆談援助者勉強会』

日 程  8月11日(金 祝)

時 間  10:00~12:00

会 場  宇美町立中央公民館 2階多目的ルーム

     糟屋郡宇美町平和1丁目1-1

参加費  2500円(筆談ユーザーさん以外)

☆筆談ユーザーさん、4年ぶりのお勉強会ですが、一緒に学びのお手伝いよろしくお願いします。

 

       (しらいしようこ)

                 

 

日常会話の筆談 銀から金の人生へ

202x年夏 MAさん  

10年以上通所している事業所が新築されました。ユニバーサルデザインに則った建物になったようです。ご本人の感想を聞きたくて質問しました。

続いて最近の様子を聞くと、気になっていることわざについてや、気になるご自分自身の行動について言及されました。目新しい本やチラシは、他の方が持っていても見たくなって、黙って取ってしまいそうになることは、「またやってしまった」「一言言えばいいのに、行動が先に出てしまう!」と、本人にとっても困り事になっています。そんな、振り返りをしながら、普段の仕事の話しもします。

こんなふうに、筆談が、ごく普通の日常会話として使える日が、他の方々にもきてほしいと願っているというのが、今回ブログに載せた意図です。

 

MAさん:()は援助者の質問や補足

ちょうど新しい施設のこと、聞いてもらえてよかった。

フラット(床が)って言うけど、枠があって気持ちわるい(下足する場所の玄関床の色が、違っている事)。

何が新しいかっていうと、建物だよ。

(少し間があって、話題が変わる)変えてほしいことがある。A(事業所)の作業時間、長さ。ビーズ(ネックレスや小物キーホルダー作品作業販売)は集中できたらいいけど、気になることがあると席を立ちたくなるから、1回立ち上がっても、また集中できるようにして、ビーズは続けたい(立ち上がると支援員さんはもうしたくないと判断されて、作業は休憩になる)。

(新しい事業所の建物の話に戻る)皆さんのことを考えて(車椅子対応ができるように、段差をなくしたなど)新しいB (施設)になりました(はじめに本人の感想をストレートに話したけれど、考えてみればバリアフリーだなあと気がついて、思いを追加する)。

(この後、よく読んでいることわざ辞典の中で、ふと浮かんだ文言が話される。聞き手なりの解釈は()の中)

悪銭身につかず。正しく働いてお金を得る方が、しあわせになるってこと。(ビーズ作りそのもの!)

口も八丁手八丁。おしゃべりな人は、手もよく動くということ。(ご自分の事を、褒めている!?)

泣きっ面にハチ。大事件があったのに、その後またイヤなことがあるってこと。(気になってふと立ち上がって制止されたのに、触っては困る物を手に取って、更に止められた)

ほんまは(本当は)、止めてほしいと想います。 急がば回れ。(見たい物がある時は、まずことばで尋ねてからした方が、手に入りやすい!)

「喉元過ぎれば、、、(音声で)」どんなにつらいことでも、一瞬過ぎれば 忘れる。

ほしいものは勝手に取ると、かえさないとダメになるけど、待っていたら、貸してくれるかもしれないってこと。(間髪入れず、書き続ける)できたら苦労しない。

今は銀。これから、金の人生を送れるように精進します。

(それには何が必要?)

落ち着いて行動する。貸してください。見せてほしい。

MAとかあさんが、元気に生きること。

MAの心はいつもちゃんと言ってる(貸して見せてなど)けど、声になる前に行動してしまうので、

みんなもMAも困っているのです。

ビーズは、MAのやっと手にした職です。

これからも続けていきたいです。

                  以上

 

 

 

 

 

わかってくれる人の存在が勇気を与えてくれる

 

今日は初めて若い女性のアシスタントに入ってもらいました。そのために相当緊張したのでしょう。手の動きが硬くて、筆談も最初はとても書きにくい状態でした。特に今大きな困り感はないようで、おばさんが亡くなって、葬儀に参加してきたというお母さんの話の感想を聞いてみました。死ぬと体だけになり、焼いて最後は何もなくなり、そして、それはみんな同じなんだとわかったということでした。そして、死ぬまでの間、自分なりに精一杯生きようと思ったと書いていました。また、自分が死ぬことに怖さはないけれど、お母さんがいなくなるのは怖い。自分が生きている間死なないでもらいたい、、というようなことを書いていました。お母さんは、それは無理! でもまだ当分大丈夫と答えていました。

少しリラックスしてもらおうと思い、床に寝てもらって体操に誘いましたが、体がガチガチで全く動かないので、しばらくアシスタントとお母さんに手と腕を支えてもらって、背中と付き合うことにしました。下の方から触れていくと、ちょうど肩甲骨の少し下ぐらいのところで、うーん!と押し返す力を感じたので、そこに留まって、体の表現につきあいました。しばらくつきあったら、仰向けに寝てもらう誘いを受け入れてくれました。

お母さんには頭のところにいてもらい、アシスタントと二人で片足ずつ持って、つきあいました。最初は、ドキドキしながら、こちらを伺うように、おずおずと動いていましたが、ゆっくりつきあっていると、だんだんと大胆に動くようになり、笑顔も見えてきました。最初は、お母さんに腕をぎゅーとつかんでいましたが、その手も放して、もう大丈夫という感じでした。最後は足を曲げて足の裏を私のお腹あたりに触れてもらって、ゆっくり静かに一緒にいました。

体操のあとの筆談では、新しい人が自分を嫌でないかと緊張したが、足のやりとりでゆっくり、のんびりできて、安心したことを伝えてくれました。アシスタントにも「ありがとう」と筆談で伝えることができました。その後の筆談でのやりとりです。

「また来てください。ぼくのことを分かってくれる人が増えるのはすごく嬉しいです。僕は話せないけど、気持ちはちゃんとあります。それを分かってくれる人は多くないです。阿部先生の他にも書いて伝えることが、初めて書けて嬉しかった。(M:石田先生とも書いたよね)そうでした。石田先生も僕の気持ちをわかってくれる先生でした。(世の中の)みんなは僕の気持ちがわからないけど、少なくてもわかってくれる人の存在は、僕に大きな勇気を与えてくれます。もっと書ける人が増えたらいいなあ。(阿部:今年は職員のための筆談の研修をしようと考えているよ)お願いします。僕たちを助けてください。(最後に何かある?)(アシスタントの人に)書いてくれてありがとう。」

Sさんと母と七野の筆談と心のケアセッションの軌跡 その5

 この時期は、過去の大変だった自分へのねぎらいの言葉かけをすることで、自己承認ができるといいなあと考えセッションをした。そして自分自身の課題(立ち歩いてしまう)が見えてきて、手伝ってもらいながら、本来のありたい自分を目指していこうとしている。

Sさんとの軌跡はその5で、一旦修了。

 

202X.夏(前のセッションをしていたご家族とホワイエの教室で、入れ違いになり、お父さんも参加されているのを見て)

今来てた人は、お父さんもいっしょですか?

(はい、そうです。Sさんもいてもらいたいですか?)

別に、ぼくはとうさんが車で送ってくれるから、休憩しててほしい。

(ここホワイエ教室の中へ来なくてもいいのね?)

大丈夫。お母さんが話した事を後で言ってくれるから、安心です。母と先生が聞いてくれると、安心してお話しが出来る。

(このセッションの少し前に、20年ぶりに痙攣が起きる)

それより、けいれんのことがききたい。

前っていっても、ずいぶん前だから忘れてしまった。心が折れそうになった。あんまり久しぶりで、どうしてけいれんが起こってしまったのか、知りたい。脳みその中に電気がビリビリくるの?

お母さんはなったことがありますか?(ない)

先生はなったことがありますか?(ない)

ぼくは、一分間だと言われても、すごい長い時間だったんだよ。ずっとしんどいっていうか、よくわからない感じで、みえてるのにみえないし、聞こえてるのはなかった。

お母さんは心配したと思うけど、ぼくはとても心配だった。

またけいれんがあっても、心配しなくてもいいって事、少しビックリしたこと教えたかった。

ぼくは薬を飲んでいたから、少しのけいれんで終わったのかなあ。まさしくお久しぶりのけいれんは困ったなあ。

さようなら けいれん。

(けいれんの後)テンション高いって言われたけど、確か自分でも変な感じで止められないんです。職員さんが知ってくれてるのかなあ。

 

(筆談の文章が途中で、立ち上がろうとする。たびたびあるので、止められる時は止めながら、)

お母さんは言いたいこと言っていいと言うけど、いつも言うことが出来ないから、やっぱり最後まで言う(筆談で書く)なんて、めちゃ勇気のいること、だって逃げたくなるんです。(Sさんは、話し(筆談指談)半分位で立ち上がろうとすることが多く見られる。落ち着きがないというより、何か理由があると考えていた。その答えの一つを教えてもらった)

まず、自分の意見が通ると思ったことがない。七野先生は、すごく気持ちのことを聞いてくれるけど、(職員さんは)だいたい我慢してねっとか、怒らんといてねっとか言う。

ぼくだっていろんな気持ちになるし、決められたことだけじゃなくて、言い方がわからないけど、どうしようか迷っている時もある。

いろんな気持ちがあっても、ことばでは伝えられないし、声はあんまり変えられない、自信がないです。

(自信は体験したらつくよ。声は出る出ないは、自信とは別。)

ほんと?!

今はSがしゃべりたいことは、いろいろしてごめん。いろいろするとイヤになってしまう。いろいろしたら、とめてほしい。

 

202X.秋

みんなのこと、大切に思っているので、ぼくとしては、大人のふるまいをしたいと思っているのです。この前、船(足こぎボート体験)の時も、がんばって漕いだのに、「頑張って漕ぎや」と言われてイヤだった。

お母さんといると安心だけど、ほかの人といるといろいろ心配する(ので、いろんなことしてしまって) おこられる。

(、極め付けのような書き方に、ぼくって怒られる存在と決めたのはいつ?)

学校行ってから、高等部は大嫌い。

(何歳ですか?)

四十X(歳・現在の年齢)

(高等部は何歳?)

16 

(では、高等部のSに なんと言ってあげる?)(七野は過去の自分への思い込みを変化してもらいたいと考えて、提案した)

S坊主、おまえはよく頑張った。うるさく言われても、辛抱したね(ため息)

Sは本当は なんでもわかっているのに 言葉がないと、わからんやつと思われてたね。

ぼくSおじさんは、高等部のSを応援するよ。

いつも一生懸命なSが好きだよ。どうか自分のことだめな子とは、思わないで。Sは大丈夫、大丈夫。おじさんになっても、幸せにくらしているからね

おしまい

(過去の自分に語りかけるという、心理療法が本人の勇気づけや意識の変換に寄与したと思う)

H先生(高校の時の担任)は優しかった。本当は、ぼくはH先生が好きだった。

お母さんのように、誰がなんと言おうとも ぼくの味方をしてくれました。優しい先生でした。だから高等部は、我慢して行きました。

ぼくがぼくをよしよしするって、どういうことですか? 怒られた時、大丈夫って思うこと?(七野の提案に真摯に応えて下さった後で、確かめしたかったのかもしれません)

 

(家に帰ってから、母と筆談)

今日は、七野先生とお話しして、うれしかった。

ぼくが今まで、頑張ってきたことを 褒めてもらえた。(ご自身が、高等部だった自分をねぎらったといえる)

 

202X.遅い秋

ずっと薬のことが気になっていました。この頃よく寝られてうれしい。朝起きるのはすっきり。

(園は)のんびり過ぎて したいことが浮かばないです。仕事が少ない。いつも仕事の時は、うれしいです。今日は少しだけと言われると、Sがちゃんと出来ないから、仕事少ないのかなあと思うんです。 仕事上手く出来ないから。(そういうことではないよ。)

(Bへ実習に行って)

そうですよ。Bは仕事でした。おみやげ付き!!

『お土産は 仕事のうれしさ。』(このことばは、後にB事業所のKさんが感動して聞いてくれたとのこと)

B(事業所)へは、いつ行ってもいいんですか?ずっと行けたら、お仕事が出来るSになるかな。ぼくはやっぱり、いかした男性になりたいんです。

(園の担当の)Iさんは、やさしいけど (立ち上がってしまうので)Sがしたくないんだとすぐ言うんです。本当はやりたいけど、ホントにやりたいんですよ。

 

(じっと、座ってる練習しましょうと提案。3分間計るから、そう言うと自分から自己紹介をはじめる)

こんにちは、ぼくの名前はSと言います。○○という所に住んでいます。ぼくの家族は、お父さんとお母さんとぼくの三人です。たまに一緒に、旅行に行きます。それは、ぼくが別の所でも寝れるように練習します。

(3分修了)

まったく、S仕事がしたいのに、なぜか立ち歩いてしまうから、仕事嫌いなんかなあと思われていて、悔しいです。書かせてくれてありがとうございます。

お母さんはぼくの事よくわかってるけど、園には行けないから、Iさんに頑張ってもらいたい。

(Bの事業所長)Tさんは園にはいない。

だから毎日仕事したいと思っているんですよって、伝わったらいい。

ぼくは立ち上がってしまう癖があるけど、ホントはちゃんとしたいって、誰よりも思ってるんです。これが本当の事です。真面目にやりたい気持ちがいっぱいあるから、どうぞお願いします。

 

(歯科検診に行って)

歯医者さんは、ぼくが起きると待ってくれるのでうれしいです。

虫歯になるとイヤだから頑張る。ずっと行っている歯医者さんだから、安心です。

 

202x.冬

Bに行って仕事していました。よかった。

(Bの仕事は?) 

袋にいれる、あつめる。職員さんは優しいから、手伝ってくれるし、ぼくが少し頑張ってしようとすると、褒めてくれるのでやる気が出ます。ぼくはやはり仕事が好きです。

疲れたのは、もちろん疲れました。それでもやりがいがあると思います。

ただし、(立ち)歩いてしまうことは、何度もあるので、ちょっとSも困っている。

仕事は楽しいけど、難しい時もある。

(毎日B行くのはどう?)

行きたい。

 

(この一年を振り返って)

コロナのことがあって、いろいろ大変だったけど、家族が元気で過ごせてよかったです。

そしてぼくは、仕事という大切な事に気づいたので、とても充実した一年でした。

(後日談、好ご期待)

 

Sさんと母と七野の筆談と心のケアセッションの軌跡 その4

作業実習が始まり、加えて母の入院で父との「一週間ドキドキ生活」、目まぐるしく変わる日々の中で、自分の気持ちと向き合っていくSさんの姿があります。

家族で経験してきた「生きることの楽しさ」をことばにし、さらに仕事をする充実感を、手にし始めているSさんの日々が見えてきます。

 

202X.秋(園は続けて通所しながら、Bに作業実習に、月に数回行くようになった)

今は充実している感じです。みなさん(B事業所)が、Sのことを出来る人やねと 思ってくれるのがうれしいです。Sは誰がスタッフでも、同じように仕事をします。

(園の仕事)ちょっとだよ、でもしごとがあるのはいいことです。

Sがしたいのは、全く何もしないことではなく、ちょっとでもお仕事して役に立ちたい。

 

(母が入院することになり、お父さんと二人で過ごすことになった)

イヤだけど、ショートステイよりましだ。怒られないのなら、一週間でも大丈夫。

それよりお母さんは寂しくないの。一週間病院でお泊まりなのでしょう。痛くなっても泣けないよ。大変なことだと思うから、がんばってほしい。応援するよ。お母さんはいつも強いね。

だって、お父さんにも話しをして、ぼくのことわかって貰うように、いつもしてくれてるから。

(実際のお父さんは、セッションにいつも車で送迎してくれているし、宿泊練習も含めてさまざまなSさんの素敵なサポーターであり、協力者なのです。)

きっとお父さんも本当はSのこと かわいいと思っているのに、ついついおこっちゃうんだよなと思う。

(前回のような、嫌われているという被害者意識から、客観視している大人のSさんの姿が、見える)

 

202X.冬(年末に母が入院して、お父さんと過ごして)

たのしかった。お母さんがいないので、とうさんもSも緊張してた。だから、いつもみたいにイラついたり、つっかかったりしないようにしてたと思う。

ごはんとか大変だったけど、上手くいくように、かあさんがしてくれたと思ってる。

やっぱり男二人は、なんかしょうがない感じがする。かあさんがいてくれるのが、一番いいなって思ったよ。 

ただし この前はかあさんがいなくなったら、グループホームと言われて、病気じゃなくていなくなるって事は、、、。(複雑な気持ちで考えている様子)

Sも一緒に行くことは出来ますか?(どこへ?)

 

ある命を生きることは、こんなにも楽しいって思えるように、生き抜くことが、ぼくには父さんと母さんがいつでも必要なんです。

いてくれないと困るよって思っちゃう、この気持ちは、どこにも置いとけない気持ちなんだよ。

名前をもらった時から、Sとして生きていくことを決めた。

だから いっぱいいっぱいとうさんとかあさんに生きる楽しさを教えてもらってきたんだから、これからだって一緒にいたい。

 

こわいことはないけど、いつも一緒にいてくれる世話人(支援員)さんと仲よくなれるか心配。

お母さんが寂しくないか心配。とうさんが心配。

お父さんは何をするにも、ちゃんと出来ないとイヤな人だから、Sが(GHグループホームに)いっている間、しっかり出来ているかと心配するやろうから、心配。

 

心の中はさみしいのに、(お父さんは)頑張って平気な様子でいるのは、Sはよくわかっている。

でも男はやっぱりかっこつけなと思ってるだろうな。

そうだからあんまり言わんといてあげてな。

 

そしてSも男やから、困った時についつい知らん顔してしまう。

(GHにはいったら)世話人さんは、Sさんは大丈夫って思ってるけど、小心者ですって言っててね。

「これから」って、言われるとやっぱり心配な気持ちがあふれてくる。「おいおい」っていう言葉をよく聞くから そのことですか?

(B事業所のGHを見学して)Kさんはいい人です(Bの理事長)。

 

Sは仕事をしたいと思ってたから、(B事業所は)仕事があってうれしいです。そして「ちょっと寒いけど行こうか」と(職員さんがSに)言ってくれるけど、寒いのは大丈夫です。

まあいい感じなので、少し落ち着きました。

 

楽しみは仕事した後、やったと思えることが楽しみです。(このうれしさが、Sさんにとって仕事の後のお土産!になっている)

 

おとなしいから(リラックスして過ごしてる)って、うれしいだけじゃなく、やっぱり楽しみは、仕事をして役にたったよ、ありがとうと言って貰えることだし、ちょっとずつ上手くなってるって、かあさんに言ってもらえてうれしいです。

ありがとう。またお話ししてください。

 

202x.春

まずはじめに言いたいことは、C(宿泊の練習用の家族の別宅マンション)に行って、眠れたのが、うれしかった事です。

そしてお母さんが言うように、家では相変わらず、寝ることがSの一番の困り事です。

おかあさんの顔が、はれているのが心配です(母の顔がヘルペスの為 顔面麻痺になったこと)。

一番大変だったのは、お休みの時でした。Sはマスクしたくないでしょ(普段は、母のマスクもはずそうとしてしまう)。でもかあさんの顔を見ると心配なので、イヤだけどマスクしていてほしい位でした。

困っていること一杯あるって言われたけど、寝ることだけがぼくの困り事です。

気になることがあると、目が覚めてしまう。

 

「お母さんのことが気になるから、眠れない」と言った時、お母さんをわるく言うつもりなんて、全くないのに (お母さんがその事を)気にしてるだなんて(申し訳ない気持ち)。

パジャマをかえたら眠りやすい(実際は何度も着替える)。

(昼間)途中に眠くなる事はありません。お母さんは何でSの寝ることに、気が気でないのですか?

 

ショートステイは行かないのでしょ。

まだ心の傷が残っている。だから、ショートステイって聞くと緊張する。(以前ショートステイで寝られなくて、たたかれた経験がある)

 

C(家とは違う場所で、眠る練習のため借りている場所)はだいぶ慣れてきたし、上手くいったらうれしい。

ショートステイはなんでするの?

まだ、グループホームは行かないよって、これからコロナがなくなったら、いろいろなことをするから、そのすることの中にグループホームがある。

その練習でショートステイに行くんだったら、コロナがなくなったら、ショートステイに行きます。

 

ママと(おかあさんが)言われた時(代)から、いくつになっても 子どものこと心配なんだね。まずは薬が効くようにお願いしたいです。お母さんは寝てますか?ぼくは起きていても、家から出たりしないから大丈夫。

 

202X.梅雨(母と七野が、Sの薬の話しでしゃべっていると、S立ち上がる)

おかまいなしに、おしゃべりするから、待っていられなくなる。

お母さんは身体の調子が、いまいちになっているので、Sはこのところ心配です。

マヒ(顔面の麻痺)って言ってるけど、それは病気でしょ。しんどそう。お母さんはいつも機嫌良く元気でいてほしいから。

(園の話し)お仕事は少しさせてもらってる。

まだ(睡眠導入の新しい)薬は始まって少ししかたってないよ。

でもお医者さんはSが眠れなくて困っていることを、わかってくれたのでとてもうれしかった。

寝られないのは誰のせいでもないんだと思うと、少しだけ気が楽にはなってはいる。

 

Sはゆっくり休めたら、しっかり見えたり聞こえたりするから、もっと活躍して仕事を任せてほしいと思う。

ただし、今日(セッションの日)は早く起きてしまった。

(仕事は?)

ふつう。やっとお仕事らしい事をさせてもらって、大人になっていいんだって、思えるようになった。Kさんはいい人です(計画相談の担当者)。

時々来てくれると(モニタリング)ぼくのいるところの仕事がよく出来るようになっていると思います。監督みたい。

Sはいつもお母さんに助けられるなあ。ありがとう。

 

これから園の仕事もするけど、B事業所の仕事もしてみたい。Kさんによろしく言ってください。