ハンディのある人との『筆談コミュニケーション』

自閉症、ダウン症、重度心身障害の人たちの豊かな内面と出会えます

Sさんと母と七野の筆談と心のケアセッションの軌跡 その3

 Sさんは、家族生活を充実させながら、自分を振り返っている。そこで、(GHグループホーム)での生活を考えている話しになり、本人の不安や動揺が語られる。やりとりの中で親の真意に触れ、落ち着いて考えられるようになる。誰の心にもある「自立と自律」への、はじめの向かい合いの場面といえる。

 

202X.梅雨(最近の希望は?)

早く毎日、園に行くこと 散歩のお出かけは いつものようにしたいです。

お父さんも調子はまあまあだから 健康が戻ってきてると思うので、安心しています。

あんまりお父さんとお母さんに迷惑をかけたくない。

いろんな良い家族があるなら ぼくの家族は 一番温かい家族です。

しちのさんもそう思うでしょ。

(えぇ、そう思うよ)

(七野と以前雨の絵を描いていて)いつか忘れた、でもぼくの心には 時々こんな感じで雨が降るときがある。

そこで僕は 水で遊びたいのだけど 叱られるからやめとこうって思う。

いつもぼくなりに(不安やストレスを解消する)よいこと見つけているけど、それはとめられることが多いです。

間違ってもいいからやってみたいことはあります。手作りの箱作りとか棚(作業のこと)とか。家でもいつも同じ事だけより 失敗しても良いから、いろんな 手伝いをさせて下さい。

ストレッチ体操はチョット辛いです。

(続いていますか?) 

はい、ぼちぼちですね。

ぼくは歩くのは苦じゃないです。 まあ父さん母さんより若いですから、お花の咲いている道は ゆっくり花を見ながら歩くところが、落ち着いて良い気持ちでいられます。

でも運動はもっと元気よく歩くのが良いと思うので、どっちも出来るようにするのは大変です。だから今は 綺麗なお花を、ゆっくり歩いて見て歩きたいです。

(書道クラブで書いた) あの時のお習字は 僕の気持ちを書いたので 皆に見て欲しい(数年前の習字の作品は、ホワイエ教室に飾ってある)。

『いきてるっていいな いきてるっていいな いきてるってたのしいな』

 

202X.6.18 (父の日に)

お父さんに手紙を書いて嬉しかった 又書きたい。

「お父さん いつもドライブに連れていってくれて有り難う

>ぼくは色々するけど とめて欲しい 早く色々しなくなりたい。お父さん元気でいてね」

 

202x年初夏 (Sさんセッションから帰ってお母さんと)

今晩は!Sです。いつもありがとうございます。

(前回のセッションから帰ってから、七野先生とお話してどうだった?と聞くと)

すっきりした(と言っていました。)

家でも、いつも同じようなことだけより、失敗してもいいから、いろんな手伝いをさせてください。繰り返していると、ちょっとずつじょうずになると思うので、体験させてください。

 

202X.夏(書道クラブの事、コロナで中止中)

また書きたいと 思っています。みんな一緒にいろいろしてたのに、集まってできなくて 寂しいです。書けることは、力を出して伝える事です。

Sの気持ちを皆さんに発表してくれるのは とてもうれしいです。自分では何も出来ないけど、語ることは、Sがお父さんお母さんから生まれた意味を 伝える事になります。

Sはいろいろ世話になることばっかりです。そしてやっぱり自信がなくなるので、自分で決めたやり方をし続けてしまうのも、怒られる原因です。

お母さんはSが自分で考えて出来るように ずっと手伝ってくれています。もう長い年数手伝ってもらってるけど、上手くいかないことがまだまだあります。

お母さんはいろいろSのしている事をよく見ていると思う。そうでしょ。

Sは母さんがいてくれるから、とても大きな愛情に抱っこされているようです。

 

202X.秋(ホワイエ教室に貼ってある、アマビエの貼り絵を見て)

皆さんの病気が、早く良くなりますように、アマビエを作ったのは、母ですか?(Sさんと同じようにセッションに来ている参加者が製作しました)

(この日台風が来ていて、教室に来られるか心配だったとのこと)

まだ台風は近くにいますか?

(名古屋くらいかなあ)

 

(そろそろクーラーを付けずに過ごしたいけれど、Sさんが付ける事について)

暑がりのSと言われています

暑いときに付けて、気持ちがよかったので、ずっとしていたいです。

いつまでもクーラーをつけて風邪をひいたことないでしょ。たくさんの風がくる方がいいです。

おかあさんはいつもそんなことに気をつかっています。

 

(七野が、朝9時頃から教室に出勤していることについて)

いろいろすることがあるのですね。あまりたくさん仕事をすると疲れるから、気をつけてくださいね。

みんな、コロナのことが気になって、イライラしたり怒りやすくなっていると思います。

どこへも行けないことも、イヤなことのひとつです。

(日帰りバス旅行が中止になって)

イヤでもしんぼうです。

いつもはゆっくりしています。ひまともいいます。そうはいっても ついていくだけ(配達の仕事?) なので、申し訳ないけど仕事したいです。

みんなもしたいこと出来ないから、残念というより、しあわせが逃げていくと思っているのです。

 

グループホームにいずれはいるという話になると、この件は初めてのここで聞いた!)

家はひとつがいいです。

グループホームで、母がB(の事業所)のGH(グループホーム)設立委員会に入っていることについて 母と筆談))

知らなかった。(今の)園を、おさらばするのですか?

見つけたグループホームは、遠いのですか?

グループホームにいったら、家には帰ってこれなくなるのでしょうか?

(土日に帰ることも出来ます。)

Sの家はひとつと思っていたけど、グループホームは家ですよね。

Sの家は、グループホームですか、家ですか?

(矢継ぎ早の質問は、本人の何か言いたい事の表れかも、ここで、)

早く決めたいというのは、ぼくが(お母さんがぼくのことを)イヤだと思ってる?

ぼくがいると、しんどいと思ってる。ぼくがいるとしんどいと思って、寝たいと思う。

Sがイヤで寝てほしいと思っているのでしょ。

(GHを探している意図を取り違えている様子を見て、母と七野はその誤解を解く) 

(いやがられてるからGHではなく、自立・自律と将来の為と、話しをする)

(筆談七野)

みつけたことは、せんせいがこだわりの人(七野は、親が子を思う気持ちについて力説した)

お母さんは、いつもSの身体のこと、気にしていることは知っていました。

ついつい怒られると、Sがわるいんやって、思ってかなしくなってしまうのです。

わかったからゆるしてください。

(わかったことって、具体的には何?とシチノは続ける)

ぼくが、きらわれてないこと。(ホッ、一件落着というのでしょうか!!)

 

202X.秋(母と)

いろいろしたらとめてほしいから いつでも言えるように考えたジェスチャー

(頬を指さす・・・ごめんなさい 脇腹を指さす・・・とめてほしい)

(担当者会議の話し)

皆さんが来て、( Sの事を) 心配されていることが、ぼくには気になっています。

グループホーム(GH)の話になり、身体の動きが大きくなるも、指談を続ける)

いつもいつも お母さんの気持ちがうれしくて お礼をしっかり言いたいんです。

(それでは、言ってください)

いつも心配してくれて ありがとう。いろいろ心配かけて ごめんなさい。

いろいろしたら とめてほしい。

しちのさんは、ぼくのことを いろいろわかってくれて うれしい。

Sは小さい時から 「お母さん」とは言えなかった。

学校いったり 園に行ったりしてきた。

今度はとうさんが(出張)行ってたみたいに、行くんだよって言われて(グループホームのこと) 、いいかなとも思った。

それでも園には行かないで、Bという所に行く事になるんだな,

(Bは、通所作業をする事業所とGHも持っている)

そしてきょう(このGHの話を)聞いたのは、はじめてだった。

待ってほしいことは、Sがいろいろいままでお世話になった(園の)人たちに、しっかりお礼を言ってから、園をさよならしたいことです。

B(事業所)は、これからSのことを見てくれるところと思いました。

でもちゃんと(園に)お礼を言いたい。

しちのさんは これからもここでお仕事しますか?

(はい!)

また会いたいです。 

 (続く!)

Sさんと母と七野の筆談と心のケアセッションの軌跡 その2

コロナ禍の中、家族関係や自律した生活を模索している姿が、Sさんとそのサポーターたちから、見えてきます。

筆談は、ほぼ平仮名ですけれど、文章は漢字仮名交じり文で示します。()内は、母と七野の状況説明になります。

 

202X.梅雨

いつもお世話になります 暑くなってきました。僕は汗かきです いつもタオルがいります。

お母さんが色々考えてくれたので 何とか家の生活が出来ました。

歴史ある話し(毎年暑くなると繰り返される事)です。まあ元気です。風邪はひきました。

 

202X.秋

いつもこの日を待っていました。ぼくのことは、お母さんがよく分かってくれているけど、お父さんはどうしても ぼくにとって気になる存在です。(リモコンやテーブルの湯飲みの位置が、Sのしてほしい位置にないこと)

イライラして申し訳ないのです。それでも、Sにとって気になるのは 家の中がいつも同じになっていることです。 

Sは 同じだと安心します 違うといてもたってもいられなくて、心配になってしまうのです。

父さんも(病気だったけど)元気になったし ちょっと気になることはある。 

でもいい家族でいたいから、Sも良くやっているなと言ってもらいたい。 

お母さんも元気で長生きしてもらいたいです。

 

202X.秋の続き(父の予定していた病気治療の事から、家族について語る。)

しんどかったのは父さんです。年取ってるのに手術するのは大変なことです。ぼくはまだ若いから、代わってってあげたかったよ。 

お父さんも 歳が高い人になったら(高齢者) 相談(定期検診?)に行くと良いと思います。

ぼくは (病院に行くのは)薬の相談です。 ただ 返事が出来ないのが残念。(病院に行くのは)緊張する、たまにしか会わないからなあ。 皆さん(病院スタッフ)の親切が嬉しい。 

お母さんと話したいけど 悲しませたくないから 言えない時もある。だから 色々なことをしてしまうので嫌になる。 将来の心配をかけ、ごめんなさい。

ぼくは、父さんと母さんに 長生きして欲しい。

ぼくも長生きします。 長生き家族でいようね。 

いつもぼくのこと考えてくれて、ありがとう。

 

202X.お正月(母と筆談、途中から七野)

あけましておめでとうございます。色々してもとめてほしい。

いくら気になるといっても 聞いてもらえないことは、窓の開けること閉めることです。

(いえでのこと?)違う。(詳しくは語らない)

 

園も無いし(コロナの為休園) 毎日結構、暇してます。(家の)手伝いは好きです。

お母さんの毎日の仕事(家事)は 丁寧にしてると面白くなってきます。ぼくは家にいることも それなりに楽しんでいるんですよ。

 

(ロヒンギャ難民の話、日本の子どもが靴を送ったの新聞記事を一緒に読んで)

外国の子どもで、靴が無い子もいるんだね。 びっくりです。 足が痛くなるよね。

靴をあげた、いい話しですね。 日本の子どもは、やる気がある子はいろんなことが出来る。

 

202X.春 (ここで撮った動画や筆談を支援員さんに見てもらうことについて)

いいと思うよ。Sのことを、「あまり分かってない人」と思っているから、みたらどうするのか知りたい。 今迄だって 門を閉めるのは(やまゆり園事件で、こわくなったからなのに)、ただのこだわりって、決めつけたんですよ。 僕らだってまだまだ進化形です。 

コロナは難題です 特に歳いった人が気をつけないと、大変なことになるので ぼくも家族も今まで通りの生活は出来なくなっても、辛抱しながらです。

(その時の変化に対応して、進化してますね!と七野)

今の話しで ぼくも父さんも進化形と言われて なんか嬉しいです。

 

202X.(コロナが一旦収まって、通所再開)

ぼくはやっと園にいけて、ホッとしています。ずっと家にいると (親に)迷惑をかけてしまうので 申し訳ない気持ちになって、(それなのに)又失敗をしてしまいます。

(家の中の様子は)いつも同じがいいです。父さんと今は仲良くしています。

(母からの提案で、Sさんが落ち着ける環境を、家族でつくられている)

お店(スーパー)に行くことが有りました。皆急いで買い物をしていました

ぼくはお母さんの手伝いがしたいんです。

 

(かかと落とし体操は?という、室内で出来る、運動を紹介してここ数ヶ月続けている)

かかとがスッキリして良いです。初めてでもじょうずに出来るので嬉しいです。

お母さんと一緒にしましょう。 お父さんはあまり乗り気がないと思う。

いつも気になる事を 気にしなくてよいと言われるのが 結構辛い。

お母さんが色々と分かって貰えて嬉しい。色々しても 怒らないで、とめてほしい。

ぼくは 本当に(いろいろこだわりに見える、他の方には迷惑になってしまう行動を)早くやめたいので とめてほしい。

 

202X.春(家で、母と筆談)

聞きたいと思って(している行動とは、違った意図の事を)、色々(こまってしまう行動を)したけど 今は書いて聞けるから、色々心配しなくてもいいのに、

(やっぱり)色々してしまう。 

辛かったけど、お母さんがいたから大丈夫だった。色々して (お母さんは)怒らなかったから 僕(のこと)が好きだと思った。

 

つづく

Sさんと母と七野の筆談と心のケアセッションの軌跡 その1

Sさんは、ある支援者に20年ほど前、筆談を教えてもらっていた。日常会話として、母とはやりとりが出来る。今後、他の方ともコミュニケーションの手段として筆談を使えるようにと、母が「筆談援助者勉強会」に参加して、七野と出逢った。筆談コミュニケーションとは何か?実際にどうやってするのかを、学ぶだけではないのがこの会の特徴だ。

 

勉強会では、ハンディのある方の「こだわり」といわれる行動には、意味や意図があると考え、筆談では心のケアをベースに、気持ちのやりとりをする。本当にしたいことや伝えたいことが、周囲に理解されると、ご本人は安心して、したくないまぎらわし行動は収まっていく。また、将来に対して期待を持って希望を伝えてくれる。サポートしてくださっている親を含めスタッフへの、優しいこころ遣いを表現してくれる。このように、筆談というコミュニケーションツールを通して、私達は相手をより理解し、つながれるという経験をする。

 

Sさんとは、1~2ヵ月に1回の個別セッションを続けてきた。そこで、この数年の三者のやりとりを抜粋して、ブログに載せることにした。その時の情景を思い描きながら、読んでいただけると有り難い。(連載数回シリーズの予定)

 

筆談は、ほぼ平仮名でおこなわれるが、漢字仮名交じりにて表現する。()内は、母または七野の発言や補足、その時の状況を示す。

 

Sさんは、普段はA施設(園)に通い、途中からB施設の実習を受けるようになる。それは、重度のハンディ者が仕事をしているテレビ番組をみたのが、きっかけになっている。自分も人の役に立ちたい、何か出来るんではないかとの思いだ。

セッションでは、家族のこと、睡眠のこと、生きるという事について、語られる。

 

201X年秋 (初めてのセッションで、母との筆談から七野とも筆談・指談が始まる。)

皆さんが優しいので安心しています。寝ることは、ずっと小さいときから 気になる事の一つです。でも今は 薬があるので ちょっとましかなと 思います。

 

(最近(やまゆり園の事件がテレビ報道された後から)、ドアや門を閉める行動が強く出て、通所している園では、対応に苦慮しているとの事)(七野は、その事件について尋ねることにした)

まずはテレビがずっと そのニュースをしていたので 釘付けでした。

(どんなことを記憶していますか?)

積み木みたいな家が印象にあります。長い積み木の家です(やまゆり園の建物の映像)。

心がズキンズキンしました。とってもとっても怖かった。自分も本当に襲われると思った。

ぼくはお喋りが出来ないから、どうしても分からない人と思われる。

(筆談だけでなく、Sさんの怖い気持ちを手を握ったり、身体を支えたりして共有し、園の門を閉めたくなる気持ちに寄り添う時間を持った)(少し表情がやわらぐ)

ぼくは幸せ者です。チョット楽になりました。

(その後、門には監視カメラがついていることを説明すると、門閉めの行動はピタッととまった。この事は、こだわりと思われている行動には意味あると、園にわかってもらえてるチャンスにはなった。)

 

201X年冬

こんにちは (セッションの日を)待ってました。いつも ぼくが困っていることを母が言うので、恥ずかしい。七野さんは、どうして喋らないSのこと分かるのですか?

(人として気持ちは同じ、日本社会の中で生きているという事が共通点、などを話す)

ぼくは喋りたいよ。でも 声が出るだけ。 色々(な気持ちが)あるのがSの心です。

晴れもあれば雨の日もあります。台風はあまり来ません。

ぼくにとって筆談は心の支えです。だからしっかり書きたいです。 

でも(心が)雨の日は落ち着かなくて、ウロウロしてしまいます。

そうですまったく、言いたいことは沢山あっても ぼくがいろいろこだわるから(片付けや置き場所など)

それを止めさせるのに大変なんだ!していることを止めるのは難しい。

(それは知恵と工夫で止めることが出来ますよ!と七野)

そんなこと出来るの? 知恵と工夫をください。

(したくないのに、思わずしてしまう行動で、自信をなくしたりつらい思いをしている気持ちに寄り添ってもらい、年齢にふさわしい行動をしたいという気持ちを持っていることを、わかってもらえる事で、安心できるようになると、言動は変わってきますよと、七野)

ほんとビビるな ぼくの中に知恵と工夫もあるなんて 考えたことなかった。

 

 202X年冬

いのいちばんに 言いたいことは あけましておめでとうです。今年もよろしくお願いします。

いつも言っていることは やめなさいと言わないで欲しいことです。

もっと色々出来るのに こだわるから出来ないんでしょうと言われると、悲しくなります。

園は暇ですよ。でも 一日の殆どの時間いるので、出来るだけ静かに 落ち着いて過ごしたいと思っています。今回も汗を掻きました。この汗は半分冷や汗です(^0^)。

これからも よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

筆談援助者勉強会in大阪 2022年末その前にno.1

 

 

 

筆談援助者勉強会in大阪 2022年年の瀬

第42回筆談援助者勉強会in大阪開催(2022年末)の前に、他府県から参加の、小学生TU君の親子(以前に2回参加)から、手紙が届きました。前回の勉強会で、勇気を貰って帰っていただきました。今回はサポーター大人筆談ユーザーさんへの「質問状」がきました。勉強会への参加の意欲と意気込みに、主宰として何かお返しのお土産?!を考えました。

 そこで事前に、七野主宰の「ゆうゆう・ことばの教室」でセッション(勉強や余暇活動や心のケア・筆談)をしているメンバーにお願いして返事を書いてもらいました。当日参加できないメンバーは、TU君に想いを馳せながら、精一杯の表現です。この事をを通して、逢えなくとも繋がっているとわかることで、どれだけ勇気と支えになると感じました。

  当日は、オブザーバーに記録を取っていただき、ユーザーさんでパソコン入力の得意なNAさんに、逐語録をつくっていただきました。

  まずは、事前のやりとりからブログに載せます。順次、勉強会ライブのやりとりをお伝えします。筆談・指談は、『』で示します。文字変換はできるだけせずに、原本そのままです。必要な時は、かっこ()で内容に加筆しました。

 

TU君(小5)からの手紙

『七野先生 こんにちは

ぼくは人生について かんがえています。この先どんなふうに生きたいのか。ぼくの体とたましいは こんなにもバラバラで のんびり生きると たましいがたいくつするし、たましいがたのしいことは 体がいうことを聞きません。この先はテクノロジーが ぼくの体をたすけてくれるかな。

ぼくらみたいな 知的におとっていると思われている人にかんするけんきゅうは 科学的に証明しにくいから あとまわしだよね。

 このまま たましいにつらい想いをさせるのは 体がかなしむよ。

こんなふうに思って居生きてるのは TUだけじゃないよね。

 たくさんいけんをききたい。そうすれば たましいがなっとくできるかな。

 大人になってるみなさん おしえてください。体とたましいをバランスとれなくてつらいとき どうしていますか。 TU。 おわり。』

 

TUくんへ、MOより 指談

 『TU君 こんにちは。わたしは、MO(20代)といいます。

 TU君は、一日のうちどんな時が好きですか?

 たとえば、学校とか家とか外とか買い物とか どんなことをしている時が 自分で、一番輝いていると思いますか。

 私は、テレビが好きです。家にいて、テレビでいろんな事を知ることが出来ます。

私は、からだがうまく動かないので、自分でどこかへいくことは出来ませんが、みんながいろんな所へ連れて行ってくれます。

いろんな人が、私を知ってくれて、私を知りたいと思ってくれます。

どんなことが好きか、どんなことをしたいか、何もしゃべれないから、知りたいと思ってくれています。

 家や七野先生とは、筆談でしゃべりますから、たまにそういう人に手紙を書いて、自分が知っていることや、しりたいことしたいことを書いて、お知らせします。

 人は人のために役に立ちたいと思いますから、きっと TU君のまわりの人も、TU君がどうしたら、楽しかったり,やりたいことをできるのか 考えてくれるでしょう。

 学校の先生やヘルパーさんやまわりの人も、きっとTU君に、毎日元気でたのしく充実した毎日を、おくってほしいと 思っているので、どんどん書いていってみたらいいと思います。

 笑顔が出にくいなら、感謝をほかの形で伝える事もできますから、やってみてください。

 TU君が、いい人たちにかこまれて、少しでも悩みがなくなるといいですね。

(ここまで、一気に指談をされたので、七野から「ではTU君に一言!」とお誘いすると、筆談で書いてくれました)

(TU君へ一言)TUくん人生はたのしい  MOより』

 

年の近い筆談ユーザーさんがいると聞いての返信

 『ありがとうございます とても楽しみです。

6年生になかまがいるの。手を持って筆談のお話ししてみたいな。いつか。

会えなくても きもちがわかる友だちがいるって知れて 勇気がぬぬぬと出ます。いろんな人のことも知りたいです。 TU』

 

U君へ、NA(20代)より 筆談 

 『NAは、そこまでふかく考えたことがないです。

なぜそう考えるのか、NAにはわからないけど、長く生きていれば、いろんな事があるし、いっしょうけんめい、いきていけばいいと おもうよ。』

 

TU君へ、AO(20代)より 筆談 

 『まず、ぼく(TU君)のがんばりを、わかってくれる人を見つけてください。そして、イヤなことは、その人に聞いてもらいましょう。

 ちょっと、リラックスする方法も 見つけましょう。

僕は、お母さんとお父さんが、いつも味方なので、安心です。

そして、好きなことを見つけて、一緒にたのしみましょう。

 学校は、勉強するところだから、頑張ってね。

 僕も、頑張ってきました。難しかったり、イヤになっても、出来ることを一生懸命していくのが 大切です。

おうえんしています。

(TU君に一言) がんばれ AO

つづき:つらい気持ちが聞こえてくるようで、僕もいろいろ思い出したよ。』

 

TU君へ、KOより 

 『おかあさんを助けるために 生まれてきたのですので、まだ自分がどう生きたいかは 考えたことがないです。(バランスがとれない時は)動くままにしています。

(たましいにつらい思いをさせるのは、体がかなしむよ)心はかなしいけど、その時は泣きます。泣いた後はスッキリします。

 どういきたいかは かみさまが おしえています  KO 』          

 

 これらのおたよりと情報を持って、勉強会に臨むことにしました。

加えて、参加予定の筆談ユーザーさんにも、事前に質問状をメールしておきました。

 当日は、複数回参加者の方々で、更に様々な考えや思い、または思い出話から、生きるヒントとエネルギーをもらう時間となりました。

 続きをお楽しみに。

 

親子の思いが伝わる指談コミュケーション


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題名 親子の思いが伝わる指談コミュニケーション  202X年夏

事業所(生活介護)とショートステイを利用して生活されている30代のMさん(男性)とお母さんそして支援者(七野・月1回のセッション)とのやりとりです。

(長い間通っていた病院を変わることになって、しばらくしてからのやりとりです。Mさんは、辞書とおしゃべりが大好きな方です。それでも、気持ちや考えは筆談で伝える方が得意です。筆談を小学生からする事で、音声言語でも想いが話せる様になってきています。()は補足、「」は音声)

第1話 病院を変えたことについて

M:::Mはいつも通りがいいんです。

(変わった)Aの病院の先生はさっぱりしているので、つかまえどころがある(本人が感じている)って、感じです。

お母さんが安心して行くことが出来るなら、Mはいいけど、でもお薬の数とか量とか、そんなにすぐわかるなんて(前病院とは少し変更のある薬の処方だった)不思議です。Mは、同じがいいんです。

七野:::「ちょっと 心配なん?」

M:::まだ わからないけど、やっぱり若い先生がいい(今回のA病院のドクターは、前のドクターより、年齢が上)

M母「若い先生がいいって思っているの?(今のドクターの方が、キャリアがあるよ)」

M:::キャリアといっても、Mに会うのは初めてでしょう

M母「色んな人に出会ったから わかってくるでしょう?」

M:::Mの心はいつもちょっと不安なんです。

身体が思うように動かないことが、ちょっとでも解消されたらいいけど(言葉がでないので、すぐに身体が動いてしまう)、今の薬は頭が落ち着くだけで、身体の動きをコントロールするにはならない。

M母 「昼間、事業所で寝てしまう事が、最近多いことについては?(薬の副作用かなあ)」

M:::ビーズ(事業所でのビーズ商品作り)はしたいんです。でもなんか ねちゃうんです。

暑さだけなのか、薬がききすぎているのか?

また なんかいやな薬(副作用の眠気)で寝らなあかんの!!(少しイラッてしたかな)

に事業所では、寝てしまうことあるけど、「手伝って(スタッフのしていること)」って言われると、うれしいから手伝います。

やっぱり、役に立つって いいもんですよ(ニコッ!)

(お互いの気持ちを伝えたことで落ち着いて、病院の話しはここで一段落しました。)

追記 この後(薬変更の効果か?本人のすっきり感の効果か?)、事業所では寝ることがなくなり、またビーズでかわいいキーホルダーを作ることが出来るようになりました。七野は、そのキーホルダーを集団療育教室(七野の職場のひとつ)のスタッフのクリスマスプレゼントにしました。写真はその一部です。

第2話 お母さんに伝えたいこと

 (最近、久しぶりに2人で出かけて#チームラボボタニカルガーデンのイベントを楽しんだ話しをした後に)

M:::お母さんは、今がんばってくれて、お仕事してくれてて、Mと一緒にいて幸せですか?

母 「しあわせよ」

M:::聞きたいなって思ってたけど、なんか恥ずかしくて言えなかったんだ。たぶんお母さんがMと(普段の生活の中で)筆談してて、なんかちゃう(ちがう)と思ってたんでしょ。あたりです。

 なんかうれしいです。

M:::Mも母さんといると、めっちゃ安心する。でも、ショートステイも行くからね。

ショートステイでも、自分の居場所 ちょっとづつ作ってるつもり。

自分一人で(ショートの)用意はできないけど、泊まる時の心構えとして、自分の用意は自分でしたいと思ってる。 母さんは、無理と思いますか?

母 「ウッ(痛いところを突かれた感じで、答えに窮する)(難しい、、、かなあっというのが、正直なところの様子)」

母 「しようって言っても、『いらない』っていうでしょ(ちょっと反撃?)」

七野 「『いらない』って、したことないから、できるかどうか不安だし、愚痴ってると捉えてみるのは どう?!」

母 「かばんにいれる?」

M:::お母さんは無理って言うけど、無理は無理でないようにしたいんです。ちょっとやりはじめてみて、上手くいかなかったら、また七野先生に相談したらいいでしょ!

追記 その後、ショートステイの用意は、手伝ってもらいながら本人がしているとのこと!

聞きたいことは・したいことは、有言実行でやれちゃったよって事でしょうか。

第3話 「筆談援助者勉強会in大阪」にユーザーさん(筆談実体験の協力者)として参加していること

M:::お母さんも、他の人と筆談(体験)したいでしょ。この前は、別の人と筆談してどうだった?

(母の答えを待つ前に)書きやすかった? 緊張した? 大丈夫だった?

「ストップ!(自分の心のザワザワを感じたのか、自分から音声言語と手の動きで、書くのを止めた?)」

お母さんも、違う人と書いてみたいと思うでしょ。

だからMも大丈夫になりたい(言葉が上手く出ずに、身体が動いてしまう事があるので、母はMの横でサポートすることが多い)

もちろん 母さんを自由にさせてあげたい。

七野(勉強会の主催者なので) 「お母さんも、別のユーザーさん達(大抵4,5人ユーザー協力いただいている)とするチャンスつくるよ」

M:::やってみるよ

七野 「心にある誰でもが持っている心棒(その年齢なりにしっかりしたい・役に立ちたい思い)の大人心を立ててみよう」

M:::しまってる!? 大人の心はしまってしまって、驚きと優しい心があって、おどろきの心が僕の気持ち、ザワザワさせる。

優しい気持ちは(筆談練習の時に)「(ユーザー)先生 お願いします 書いてね」って言われると、サービスしたくなる。だから、やっぱり勉強会には行きたいです。

お母さんも(勉強会に行くために、お仕事)お休み取ってくれて、ありがとう。Mと楽しい勉強会にしましょう。(自分たちが創っている勉強会なんだという、意欲が聞こえてきて、嬉しいかぎり“涙”)

あきらめないでは、本当にウクライナの人に言いたい。自分の国だから、一生懸命守ってる。だから応援したい。あきらめないでって応援したい。

(Mさんは、身体のコントロールが上手くいかなくて、(ずいぶん前だが)自暴自棄になっていた時期があり、「あきらめる」と口にすることがあった。母も七野も「あきらめへんよ」って、(心と身体で)張り合っていた事を、七野は思い出した。20年以上のお付き合いで、しっかり自己承認の道を歩んでいるなあと、母も七野も感慨深く感じました。)

以上 3話でした。 読んでいただき、ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Sさんの特別支援高等学校への進学に向けて

2018.11.4   Mさん(高校1年) Sさん(中学3年)

 

Sさんは前回から今回の間、学校の標語の最優秀賞に選ばれたという話(標語:困ってる?そう声かけて助け合う)、高校面接で学校が気に入って進路が決定、漢字検定も、前はテスト用紙を破ってできなかったのが、今回は頑張れたなどなど

S:おかあさんと頑張って、ここまでこれたって思えます。この間はありがとうございました。

M:よかったね。私も全く同じです。私は(中学より)高校の方がもっと自由で楽しいです。

S:そうなの。それはいいですね。私も高校はいい感じでした。行ってみてここならやれそうって思いました。先輩は何が一番楽しいですか?私は中学で皆と別れたくないです。

M:お母さんとやってきて、今は落ち着いていますが、つらい時でも、学校の友達は安心でした(母:小学校1年から一緒だからね)。だからお別れは嫌です。新しいことは楽しみ半分、怖さ半分ですね。でも、きっといいことがいっぱいあるよ!

S:そうですね。期待より、怖さの方がいつも大きいです。きっといいことがいっぱいあるって言われると、少しほっとします。お母さんがいつもそばにいて助けてくれるからなんとかやれてきました。でも、だんだんにお母さんがいなくても頑張れる自分になりたいなあと思います。

M:すごいね! 私はダメです。お母さんが大好きでお母さんなしなんてやれません。

(安富歩氏の「依存できた時、人は自立する」という話をする。依存先が多ければお母さんだけに依存しなくてすむ、という話)

S:そうなんだ。どこかで、頑張って一人でやるのがいいことだと思っていたけれど、ちょっと違う感じがしました。お母さん以外にも助けてもらう人を増やすってことだね。

M:お母さんを中心に周りにたくさん人がいてくれればいいんだね。

(Sの母:学校で何をやっているのか聞きたいのではない?)

M:勉強もあるけど、実習が楽しいよ。(Mの母:部品の組み立てとか楽しいのかな?)

 今やっているのも嫌じゃないよ。Mは仕事の練習です。だって、お仕事の練習と思うと、こうやってお仕事ちゃんとやりたいって思うから、嫌じゃないよ。嫌じゃないけど疲れることもある。

S:お母さんは心配して、次々にいろいろ考えてくれています。今は、その通りにやればいいかなと思うけど、先が見えなくてどうなるかな?とドキドキします。先輩は先のことはみえてるんですね。

M:私は、きっと先のことまで、今やっているような仕事をするのかなと思っています。学校を卒業したら、皆と別れても、新しい仲間ができて、仕事をやりながら楽しくやっていけそうです。

S:お母さんも私も高校が今は考えるのが精一杯なんですね。私は学校に行ってから、また見えてくるものがあるのだとうと思いました。ありがとうございました。まずは、高校に行ってみます。

M:ありがとうございました。私は姉妹がいないので、すごく嬉しいです。仲良くしてください。

S:私も嬉しくて、嬉しくて、同じ苦しみがわかってる人と話ができて、しかも先輩だし。よろしくお願いします。

(Sの母:SちゃんはMちゃんがいるK高等部にいけないのか?と言っていた)

M:そうだったらどんなに嬉しいか でも、ここで会えるから嬉しいです。