ハンディのある人との『筆談コミュニケーション』

自閉症、ダウン症、重度心身障害の人たちの豊かな内面と出会えます

自閉症の女子学生、二人の会話(筆談援助による)

2018.9.23  Mさん(特別支援高等学校1年) Sさん(特別支援学級中学3年)

筆談援助者が二人の間を行ったりきたりしながら、手をもって一緒に書ことで二人の会話の手助けをします。書きながら、書いた内容は援助者が声にだして読みます。それを聞いて、援助者だけでなく、お母さんもそのおしゃべりに参加します。

 

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M:お久しぶりです。楽しみにしてきました。今日は何を話しましょうか?どうですか?最近は、、。私は学校が楽しく、いい生活を送っています。

S:さっきまで暴れていました。苦しい気持ちがどんどん噴出して、今まで我慢してきたのが全部出てきちゃった感じです。先輩はそういうことありましたか?

M:たくさんありました。お母さんにも先生にも気持ちをぶつけて暴れていましたよ。  苦しい気持ちって溜まってしまうとどうにもできなくてぶつけてしまったりで困ります。普段はこらえているけど、お母さんにはついぶつけて困らせてしまいます。それは本当にはしたくないことだから、悲しくなります。

S:そうなんですね。私だけじゃないって聞くとちょっとほっとします。どうして私はこうなのか?と悲しくなります。「本当にしたいことではないから、悲しくなる」って聞いてほんとにそうだと思いました。それでどうやって上手くやれるようになったんですか?私はどうしていいか、途方にくれます。

M:すごくわかります。私もそうだったよ。お母さんに申し訳ないって思って苦しかった。

援助者「ちゃんとやらなくちゃ」っていう思いが二人とも強いよね。Mちゃんはどこかで、「ちゃんとできない」ことをゆるせるようになったんだよね。

M:それはちょっと違います。お母さんに安心してもらいたいとか、喜んでもらいたいとか、それが最初にある気持ちだと思います。だからちゃんとやりたいって強く思っていたように思います。お母さんが困らないってわかったんです。お母さんと私の人生は別。それが納得できたから、ゆるせるようになれた気がします。いまでもちゃんとはしたいけど、できなくて悲しくて暴れたくなることもあるけど、前よりずっと楽になりました。

援助者「Sちゃんもそういう気持ちあるのかな?」

S:あるに決まっています。お母さんが大好きです、お母さんを楽にしてあげたい。それには私がちゃんとしなくちゃって思うのです。でも、全然ちゃんとできなくて、困らせてばかりで、学校では先生に叱られてばかりで、絶望です。こんな私じゃ生きていていいのかなって思います。

M:よくよくわかります。私も絶望を感じていた時があります。つらかったなあと(手に力が入る)今、思ってもその苦しさがよみがえってきますよ。今、Sちゃんがその苦しい中にいるのなら、それはどんなにつらいことかと思います。そこから抜けるのは大変だったからね。でも、いつかそこから自由になれる時がくるよ。きっと今が一番つらい時だと思うよ。何も言ってあげられないけど、気持ちはよくわかってるからね。

S:ありがとう。同じ思いの人がいるってわかるだけで、すごくほっとします。まだ、先が見えず苦しいけれど、先輩が「いつか自由になれる」と言ってくれたから、それを信じてここは踏ん張ります。ありがとう。今日、会えて、すごく助かりました。苦しい気持ちはなくならなくても、なんだかほっとするものがあります。ありがとう。