今年の1月放送
NHK ハートネットTV『垣根のない家』をみた
誰でも好きなときに来ることができる場所
私がわたしでいていい
僕がぼくのままでいい場所
そんな居場所があるって素敵だなと私は思った。
その場所は
奈良にある“toi(トイ)”
作家の島田彩さんとライターの大越元さんが、それぞれ、家庭での居心地の悪さを感じながら大人になり、二人で始めた場所である。
今はtoiに来る人たちとの関係性が、自分にあった「家族のあり方」だと感じているという。
そこへ、支援学校高等部3年生のあこさんがきている。学校は休みがちなようだ。
母が書いた自己紹介の紙には、自閉症、知的障害、てんかんがあると書かれている。コミュニケーションが苦手で、目の前で飛び跳ねているあこさんに、どう接したらいいかわからなかった大越さん。
話し言葉でのコミュニケーションはそんなにできない一方、書き言葉を使えば細やかな表現ができるあこさんは、toiに来たあとにいつもインスタとかで、すごくいい言葉を書いている。大越さんはそれを読んで、腫れ物としてあたり障りなく接するより、一歩踏み込んで関わっていきたいと思っているそうだ。
「どうしてtoiに行ってみたいと思った?」の問いに、あこさんはキーボードで答えている。
「家族以外の人との関りが欲しかったからです。
私はずっと、昔の自分の居場所を探していて、
だけど過去の自分の居場所を探すというのは…
だけど、初めてトイに行った日、初対面の人たちが すごくあたたかく、
自然に存在そのものを受け入れてくれて。
トイが昔の自分の居場所になるのかどうかはわから ないけど、
苦しかった過去の私が救われるような思いでした」
あこさんが、聞かれたことにスラスラと気持ちを打ち込んで答えている。
キーボードは、あこさんの大事な体の一部なのかもしれない。
ある日「おたきあげの会」で、小さくした段ボールに自分の捨て去りたいもの
「元彼全員、コロナ、…」など、それぞれが黒マジックで書いて燃やしている。
あこさんが卒業アルバムをちぎって「しーちゃんやる」と彩さんに手渡し、その場から少し離れていく。
島田さんは「おー! 大丈夫? まじ? いくで ほんまにー」と受け取って一枚ずつ燃やしながら「いいよ 新しい思い出をたくさん作ればいいんだから」「あこの写真 いっぱい撮ろうな」と優しい声でつぶやいている。
その声を聴きながら、燃えていくアルバムをみているあこさんの顔が、私にはとてもすっきりしたすがすがしい表情にみえた。ずっと昔の自分の居場所を探していたあこさんが、その自分を捨てるために燃やしたのではなく、よく頑張ってきたねと、昔の自分に言ってあげているように見えた。
あこさんにとって、今の自分の居場所のひとつは、
“toi(トイ)”なのかもしれない。
(しらいしようこ)
2021年10月にも放送
NHKの記事がありました
https://www.nhk.or.jp/heartnet/article/556/